株主還元の方法と、株価への影響について考える機会がありました。
株主還元と一口に言っても、タイトルにある「自社株買い」以外にも「増配」や「株式分割による実質的な増配」、「株主優待」などたくさんあり、それぞれが株価に及ぼす影響もさまざまです。
そんな中、今回は「自社株買い」によって株価がどうなるか、その仕組みも交えながらまとめてみることにします。
自社株買いとは?
そもそも「自社株買い」って何?って話です。
自社株買いとは、“自社が発行する株式を、その企業が市場から買い戻すこと”を言います。
野村證券の用語解説集によれば、このことがもっと詳しく書かれています。
“自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した株式を自らの資金を使って直接買い戻すことを指す。株式会社が、株主への利益還元やストックオプション(従業員持ち株制度)等に利用するために行う。
なお、自社株を買い入れて消却することで、利益の絶対額が変わらなくても一株当たりの資産価値やROE(自己資本利益率)が向上する。買い戻した自社株を再放出することなく、自社株買いの効果を利益指標に反映する国内企業が増加していることから、2015年1月から、日経平均株価などを算出する日本経済新聞も「自社株を除いた発行済み株式数ベース」で予想1株利益を算出する方式を採用した。”
(出所:野村證券 証券用語解説集)
さらに、最近マイブームが起きている板倉雄一郎さんのエッセイには、
“自社株買いに応じて株式を手放す既存株主の株主価値を、自社株買いに応じず株式を保有する既存株主が、企業という器を通じて、時価で買い受ける行為”
(出所:BTB 第2回「自社株買い」)
とあります。
これは自社株買いを別の“私たちが気づきにくい側面”から見た説明です。
おもしろいですよね。
要するに、「会社ではなく、株主が間接的に市場の株式を買った」ってことです。
自社株買いによる影響
自社株買いをすることにより、市場では流通する株式が減少します。
ということは、その株式を発行する会社が生み出した利益を、発行済株式数で割った「一株あたり利益(EPS)」は、分母の発行済株式数が小さくなりますから「増加」します。
EPSの増加を株式市場の投資家は好感しますし、株式市場における需要と供給の関係から、「需要過多」となるので、自社株買いによって株価は「上昇」することとなります。
また、自社株買いによって、その企業の貸借対照表(バランスシート、BSとも)に変化が生じます。
なぜなら、市場にある株式を、会社の資産(=つまり株主が出資したお金)を使って買い取るからです。
さらに、自社株買いによって企業が取得した自己株式は、一般的に市場に戻らないと考えますので、その価値は自社株買いした瞬間に「ゼロ」に等しくなります。
以上から、自社株買いによって支出した資金の分だけ貸借対照表の「資産」が減少し、「純資産」に自己株式としてマイナスが計上され、貸借対照表の右と左がバランスするのです。
自社株買いによって手に入れた自己株の行方
自社株買いによって、その企業が手に入れた株式はどうなるのでしょうか?
一般的に、自社株買いした自己株式には次の方法のどちらかが取られます。
(1)処分
(2)消却
(1)処分とは、自社株買いによってその企業が手に入れた株式を、他人に売り渡してしまうことを言います。具体的には、子会社取得のための「株式交換」、再び市場に売り出す「公募売出し」です。
後者の「公募売出し」はほとんどないようです。(だって自分で買っておきながらやっぱ売るなんて勝手なことはできないよねぇ)
前者の「株式交換」は割とよくある事例のようで、会社を買収する際に必要なお金の代わりとして、自己株式を使っちゃおうということです。
この「株式交換」のツールとして自己株式を利用する場合、市場に株式を売り出す「公募売出し」と同様、発行済株式数そのものは増加しますから、EPSの希薄化と需要過多の解消によって、株価は自社株買いを実施したタイミングよりも下落します。
ただし、「公募売出し」とことなるのは、自己株式を引き受けた主体(子会社)が、簡単にはその株式を売り出さないということです。
要するに「安定株主」と呼ばれる存在に当たるのですが、これによって子会社以外の市場参加者が取引可能な株式数は、自社株買い実施時から変化がありません。そのため、EPSの希薄化は伴いますが、市場における「需要過多」には変わりありませんから、株価への影響は小さなものになります。
貸借対照表への影響は…
【株式交換の場合】
株式交換によって手に入れた買収先企業株式の「株主交換時点での時価」が、「資産」に「(買収先企業の)有価証券」として計上されます。
また、買収先企業に差し出した自己株式は減少しますので、「純資産」の「その他資本剰余金」における「自己株式」が、株主交換時点での時価の分だけ減少するのです。
自社株買い時の株価<売却時の株価である場合、その企業は値上がり益を手にしますから、「その他資本剰余金」は増加します。
反対に、自社株買い時の株価>売却時の株価である場合、その企業は損失を被ることになりますから、「その他資本剰余金」は減少します。
とはいえ、「自社株買い時の株価<売却時の株価」となるタイミングで売出し、値上がり益を手にした企業は、株主などから抗議の嵐だと思います。多分これをやる会社はないでしょう(汗)
(2)消却とは、自社株買いによってその企業が手に入れた株式を、市場に売り出さず、存在自体を“なかったもの”にすることです。
“なかったものにする”というのはちょっと怖い表現ですが(笑)、取得した自己株式の使い道がなければ、こうするしかないですよね。
この場合、発行済株式数は自社株買い実施時から変化がありませんので、株価に変化はありません。
しかし、貸借対照表には変化をもたらします。自己株式の価値(=株価*取得した自己株式の数)がなくなるわけですから、「純資産」の「その他資本剰余金」が減少します。
まとめ
以上から、自社株買いを実施した企業は、自社株買い実施後まもなく「公募売出し」をしない限り、株価は自社株買い実施前のそれと比べて上昇することとなります。
このことは次回以降にまとめたいと思いますが、株価の上昇を伴う株主還元策である以上、当該企業の株式が、理論株価よりも割安であると判断される場合にのみ適用すべきだ、ということをメモしておきます。(「当社の株価が理論株価よりも不当に割安に評価されている」ことを株主たちに示す“アナウンスメント効果”の観点からです)
名古屋ではたらく私大生の株式投資日記
株式投資の紹介サイトを運営するベンチャー企業で、ライターと企業分析をしている大学生です。日々のニュースや株式投資で学んだことを“同年代の人たちに向けてわかりやすく要約”しています。
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